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労災保険・健康保険の利用

  • 労災保険の利用
  • 健康保険の利用

■労災保険・健康保険の利用手続

チャート1

労災保険の利用

■労災保険の利用の可否

 「労働者災害補償保険は,・・・業務上の事由又は通勤による労働者の負傷,疾病,障害,死亡等に関して保険給付を行うものであり(労災2の2),『労働者の業務上の負傷,疾病,障害または死亡』といった業務災害や『労働者の通勤による負傷,疾病,障害または死亡』といった通勤災害について労災保険給付を受けることができます(業務災害:労災7①一,通勤災害:労災7①二②③)。そのため,交通事故が業務災害か通勤災害に該当すれば,第三者行為災害として,労災保険給付を受けることができます。

■提出書類

 労災保険給付にかかかる請求を行うに当たっては,労災保険給付の請求書とともに第三者行為災害届と添付書類を所轄の労働基準監督署長に提出します。添付書類は,次のとおりです。

a 交通事故証明書(交通事故証明書が得られない場合は交通事故発生届)
b 念書
c (示談している場合)示談書の謄本
d (仮払金または賠償金を受けている場合)
  自賠責保険等の損害賠償金等支払証明書(または保険金支払通知書)
d (死亡の場合)死体検案書または死亡診断書
f 戸籍謄本


■損害賠償や自賠責保険との調整

 労災保険給付と損害賠償または自賠責保険のいずれを先にしても構いません。損害が重複しててん補されないように,調整が図られています。
 労災保険給付を先行した場合には,その保険給付の価額の限度で第三者に対する損害賠償の請求権又は保険会社に対する損害賠償額の支払請求権を政府が取得し(求償。労災12の4①),損害賠償または自賠責保険を先行し,それが労災保険給付と同一の事由のものの場合には,損害賠償の価額を控除して労災保険給付をします(控除。労災12の4②)。もし損害賠償の価額が本来の労災保険給付の額を超えれば労災保険の保険給付がされません。
 なお,労災保険給付を受けても,損害がてん補されず,被害者が自賠責保険会社に損害賠償額の支払請求を行った場合に,同請求と当該保険給付に基づく求償権のいずれが優先するかについては後述の『■損害賠償や自賠責保険との調整』の項目を参照してください。

■示談と労災保険の保険給付

 また,受給権者の第三者に対して有する損害賠償請求権(ただし,保険給付と同一の事由に基づくものに限ります。)の全部をてん補する目的の示談が真正に成立すると労災保険の保険給付は行われません。このような示談が成立した場合には,それが履行されない場合でも労災保険給付が受けられませんので,その場合には示談を解除し(民540・541),労災保険の給付を受けられるようにします。

健康保険の利用

■健康保険の利用の可否

 健康保険は「労働者の業務外の事由による疾病,負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病,負傷,死亡又は出産に関して保険給付を行うもので(健保1),交通事故などの第三者行為による場合でも健康保険を利用することができます。
 なお,被保険者に係る療養の給付または入院時食事療養費,入院時生活療養費,保険外併用療養費,療養費,訪問看護療養費,移送費,傷病手当金,埋葬料,家族療養費,家族訪問看護療養費,家族移送費もしくは家族埋葬料の支給は,同一の疾病,負傷または死亡について,労働者災害補償保険法,国家公務員災害補償法(他の法律において準用し,または例による場合を含みます。)または地方公務員災害補償法もひくは同法に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には,行われません(健保55①)。

■提出書類

 健康保険で治療を行うときは,①届出に係る事実,②第三者の氏名および住所または居所(氏名または住所もしくは居所が明らかでないときは,その旨)および③被害の状況を記載した第三者行為による傷病届(健保規65・73)に,交通事故証明書を添付して保険者に提出します。示談が成立している場合には示談書も提出します。

■損害賠償や自賠責保険との調整

 健康保険の保険給付を先行した場合には,その保険給付の価額の限度で第三者に対する損害賠償の請求権または自賠責保険の保険会社に対する損害賠償額の支払請求権を保険者が取得します(健保57①)。
 損害賠償または自賠責保険を先行し,それが健康保険の保険給付を同一の事由のものの場合には,損害賠償の価額を控除して健康保険の保険給付をします(健保57②)。そのため(最終的な)示談が成立すると以後保険給付が受けられなくなることがあります。
 なお,被害者が社会保険給付を受けてもてん補されない損害について自賠責保険の被害者請求を行った場合に,当該社会保険の保険者が取得した損害賠償額の支払請求権(求償)と被害者請求による損害賠償額の支払請求権とはどちらが優先するかについては,学説上は被害者を優先する考えが優勢で,従前の自賠責保険実務では被害者と当該社会保険の保険者のそれぞれの請求金額で按分されるという考え方によっていましたが,最高裁判所は,老人保健法〔現行:高齢者の医療の確保に関する法律〕による医療給付を行った市町村長が取得した損害賠償額の支払請求権について,被害者が優先するとしました(最判平20・2・19判時2004・77)。このため,自賠責保険実務も健康保険や国民保険による医療給付が行われて,保険者からの求償があった場合には,被害者に被害者請求を行うか照会する取扱いに変わったようです。

■国民健康保険など

 国民健康保険の保険給付,厚生年金保険の保険給付,後期高齢者医療給付などについても,同様に,第三者の行為による被害の届出をし(国健保規32の6,厚年規(平成14厚労令27)改正附57,高医規46),求償(国健保64①,厚年40①,高医58①)と控除(国健保64②,厚年40②,高医58②)による調整が図られます。
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